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森蘭丸異聞 - RANMARU MORI - 第十七章
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蘭丸が柴田勝家らの待つ廃寺へ戻ったのは次の日の夜遅くだった。 直江兼続の案内で城下を拝謁し、丁重に葬ってもらった武将二名の遺髪を 持っての帰還である。 「おお、蘭丸様・・・!遅いので心配しておりました!」 柴田の家臣が歩いてきた蘭丸に早足で近づいてきた。 蘭丸は彼に頷きを返すと柴田や滝川の待つ一室へと急ぐ。 「森蘭丸、ただいま戻りました」 そう告げて障子を開けると、滝川は脇に、柴田は正面に正座で待っていた。 そして小姓姿の蘭丸の姿を見るとぎょっとして前のめりに身体を倒してくる。 「ら、蘭丸殿!その格好は・・・・・」 言うが早いか、蘭丸はその場に両膝をつき、また両手を板の間へ添えて深々と頭を下げた。 高く結わえられた髪の先がはらはらと零れ音でも奏でそうな姿だ。 「申し訳ござりませぬ。他の二名、守りきれずに若い命を散らせることとなってしまいました」 そして頭を下げたまま蘭丸は懐から懐紙に包んだ遺髪を差し出した。 「なんと・・・!・・・ああ、頭を上げられよ、どうか。・・・そして何があったのか、 詳しくお話くだされ」 「はっ!」 蘭丸は部屋の奥まで行くことはなく、あくまで下座の出口に一番近い場所で居を正した。 「実は人身売買の闇商人に狙われまして、他の二名は襲撃されたその場で息を 引き取りました。 私は間一髪のところを直江兼続殿に救われ事なきを得ましたが・・・」 「おお・・・せめて御身が無事でよかった・・・殿も一安心というもの」 柴田勝家は恰幅のいいその身体を大きく動かして安堵した。 蘭丸が無事なことはこの作戦の第一条件だったからだ。 そんな柴田に蘭丸は顔色を落として視線を板間へとずらした。 「・・・・・上杉殿に正体を見破られたときに、蘭丸は自害しようと思いました。 柴田殿らの身のことも考える余裕がなく、私はただ上様への忠誠のために 動こうとしたのです。・・・本当に、申し訳ありませぬ」 再び蘭丸は頭を深々と下げた。 蘭丸がもしもあの場で自刃していれば、柴田勝家の首はつながっていないだろう。 しかしあの場で蘭丸は彼らのことを心配している余裕などなかった。 「・・・蘭丸殿、それでよいのだ。私どものことよりも第一に殿のことを思いやる。 それが一番の忠臣というものだ。だから気に病むことなどない。こうして無事に 戻ってきたことだしな」 滝川の言葉に蘭丸は唇を振るわせた。 胸元が熱くなってただただ言葉なく頷きを返す。 「そうですな・・・滝川殿の言うとおり。蘭丸殿、どうかお顔を上げられよ」 柴田もまた蘭丸を気遣い優しい声音で語りかけた。 豪胆で懐が深い滝沢に対し、秀吉と同じくらいの権力を持ちながらも柴田は 常に腰が低かった。 それは柴田ならではの優しさや気遣いで、細やかなその精神がいつも戦を勝利に 導いている証拠でもある。 「・・・・ありがとうございまする。お二人のお優しい言葉、蘭丸には身に余りまする」 蘭丸はもう一度深く一礼するとようやく顔を上げた。 「・・・しかし、上杉に見つかったとは・・・ほんに無事で帰ってきたことが奇跡のようだ」 「上杉殿はとても優しく接してくだされました。直江殿と一緒に城下も案内してくださ・・・」 「な、なんと!城下を案内されたと!?」 さらに二人は驚いたように目をみはって口をぽかんと開けた。 間者として忍び込んでその正体がばれ、しかし城下を案内されて帰ってきた人物など 今まで一人もいなかったからだ。 「はい。二名の亡骸を手厚く葬ってくだされたのも上杉殿です。蘭丸は 感謝してもし足りませぬ」 少しだけ興奮した様子で語る蘭丸に、滝川は顎を擦って唸り出す。 「誠に蘭丸殿という方は・・・・!急ぎ殿にご報告申し上げなくてはなりませぬな!」 滝川に言われ柴田も頬に色を指して頷きを繰り返した。 「うむ、うむ!越後の国情と上杉の戦法について、これほど知らぬという人物二人に 城下を案内されたのだ。 これほどの情報はそうはない!」 「・・・それのことでございまするが・・・」 蘭丸は二人に申し訳なさそうに肩を竦めた。 吉報に沸く柴田と滝川はきょとんとした視線で蘭丸を見る。 「・・・その、蘭丸は上杉側の情報を一切口にしないとお約束して参りました故、たとえ 上様でもご報告することは出来ませぬ・・・」 この蘭丸の言葉にはさすがの二人も顔色をなくした。 「ま、真の話か!?なんというお約束を・・・」 「そうしなければ蘭丸はここには戻ってきておりませぬ。・・・上様には私からご報告 申し上げる故、どうかここは蘭丸の顔に免じて手を引いてはくだされませぬか?」 蘭丸は必死な形相で滝川と柴田を交互に見詰める。 ここで柴田らがもう一度間者を送り込むというのであれば、蘭丸には止める術などない。 それが成功したとしても運命であると覚悟を決めていた。 いつ味方が寝返り敵になってもおかしくない時代なのだ。 情けだけで動いては身を滅ぼすことになる。 だからこそ上杉と直江に別れを告げて越後城下を去ったとき、蘭丸は 振り返らないことを決意した。 あの瞬間からすでに敵としての道を進んでいるのだから。 「・・・・蘭丸殿・・・お気持ちはわかりました。とりあえずは殿にご報告してくだされ。 私らはここで待機しておりまする。もしも殿が再度間者を送れと言えば我々は すぐにでも動きまする」 「そう、この千載一遇の機会を逃せば越後が国力を戻してしまうかもしれぬ」 二人の言葉に蘭丸は何度も頷きを返した。 「わかっておりまする。上様に進言する機会を与えてくだされただけでも 嬉しゅうございまする」 「・・・・では腕の立つものを用意させましょう。まずは無事なお姿を拝見させてくだされ」 「はっ!」 蘭丸はそれからすぐに越後を旅立った。 安土へ帰ると城は上へ下への大騒ぎだった。 すでに早馬が蘭丸無事の連絡を届けているからだ。 そんな手厚い歓迎に蘭丸はさらに頭を下げて城内へと戻っていく。 これほどの期待を受けて何もできずに帰ってきた自分がとても情けなく感じたのだ。 「お蘭!戻ったそうじゃな!」 そこへ信長の嬉しそうな声が飛び込んできた。 待ちきれずに天守閣から降りてきたのだ。 蘭丸は腰を曲げて信長に一礼する。 「はっ、ただいま戻りましてございまする」 「おお、ほんに傷ひとつなく・・・・いや、少し汚れたか?」 機嫌のいい信長はそう笑って蘭丸の頬についた汚れを自分の指先で拭い清めた。 「う、上様・・・まだ蘭丸は風呂にも入っておりませぬ。旅から戻って参れば汚れて いるのは仕方のない事」 久しぶりに聞いた信長の意地悪に蘭丸は唇を尖らせて上目使いに信長を睨んだ。 その表情にますます機嫌を良くした信長が声を出して笑い出す。 「よいよい、宝は汚れても美しいものよ。お蘭、せっかくじゃ。共に風呂に入るぞ」 信長が蘭丸を抱き上げると他の小姓たちが支度に慌てだした。 そしていつ入っても丁度よい湯加減に仕込まれた風呂場へと信長の足が進んでゆく。 「・・・・・・」 蘭丸は初めて信長と風呂に入ったときのことを思い出した。 そのときも信長はこのように蘭丸を抱き上げて風呂場まで運んでくれたのだ。 とても懐かしい思い出のようで、蘭丸は緩く瞼を閉じた。 「・・・私は上様とお会いすることができて、本当に幸せでございまする。 上様にお仕え出来ることは蘭丸の誉でございまする」 脱衣所につき、身体を下ろされながら蘭丸がそう呟くと、信長はいささか奇妙な 面持ちで笑いを返す。 「煽てても何も出ぬぞ?」 「何もいりませぬ。ただ上様のお傍で上様のために生きられるのであれば・・・蘭丸は、 満足でございまする」 信長は蘭丸の顔をじぃ、と見つめた。 初めて顔をあわせたときは十四の、幼き子供の顔であったというのに、 今はまだ十五なれど自分の意志をしっかりと持った男子へと成長している。 環境が無理やり大人になることを強いているというのに、蘭丸はその素直さを けして失くさない。 成長が早いのもきっと、その素直さが吸収力に繋がっているせいだろう。 信長は蘭丸の頬にそっと指先を触れさせ、掌で包み込むようになぞった。 「では誠心誠意仕えるがよい。そなたが恥じぬよう、わしも努める故」 「はい・・・はい、上様」 ゆっくりと深く、蘭丸は頷いた。 それはずっと信長についていくと、心新たに誓う蘭丸の決心でもあった。 信長は蘭丸から手を引くと手早い動きで小袖を脱いで裸になり浴室へと入っていく。 その後を蘭丸が急いで追った。 「して、越後はどうであった?」 信長の問いに蘭丸は思わず視線を泳がせた。 そして手ぬぐいで湯椅子に座る信長の背を洗いながら今までのいきさつを話し出す。 信長は時折怒ったように眉根を顰めたが、蘭丸の言葉が終わるまできちんと 話を聞いてくれた。 「・・・それ故、蘭丸は上様にご報告申し上げることができませぬ。上様の下へ 戻ってくることができた蘭丸の、せめてもの恩返しにございまする」 ざぁ、と信長の背や肩に湯がかけられた。 湯気で重くなった睫を少しだけ憂いて伏せ、蘭丸は信長の前へと回り込み膝を ついてその顔を見上げる。 「・・・上様、ふがない蘭丸をどうかお叱りくださいませ」 よほど急いで浴室へ入ってきたのか、蘭丸の前髪はそのままに垂らされていた。 蘭丸の顔は素直で真っ直ぐな瞳も、乙女のように桜に潤った唇も、まるで神が あつらえたかのように整っている。 その容姿を見ているだけでも人は幸せな気分になれるだろう。 信長は愛しそうに蘭丸を見つめた。 「・・・お蘭よ、わしは天下を取る。そしてもっと広い世界を見るのだ。そのためには武田や 上杉を滅ぼさなければならない。それは譲れぬ。けして譲れぬことだ」 蘭丸はこくりと頷いた。 それは上杉領で蘭丸が覚悟したのと同じこと。 たとえ親友で背を預けていたとしても、翌日には敵に回っているかもしれない戦国の掟。 「わかっておりまする。上様が進軍することを蘭丸は御止めしたりは致しませぬ」 「うむ。・・・・・だがな、お蘭」 信長は両手を跪く蘭丸の頬に当てるとその顔を覗き込むように自分の顔を寄せた。 蘭丸の視界に涼しげな目元の精悍な信長の顔が近づいてくる。 一服盛られ狂おしいほどに身体が火照ったあのとき、夢にまで見た信長の顔。 蘭丸は心の臓が締め付けられるほど切ない思いに眉尻を下げた。 「天下統一したわしの傍にはお蘭、そなたがおらねばならぬ。共に世界を見ようぞ。 二人ですべてに驚きを与えようぞ」 「上様・・・・」 信長は蘭丸の身体を強い力で抱きしめた。 裸のままの互いの肌がふれあい、その確かな血潮を感じさせている。 蘭丸は生きて帰ってこれたことをこれほど強くに感じたことはなかった。 そしてようやく気がつく。 蘭丸はずっと怖かったのだ。 越後で襲われたあの時から、ずっと怯えていたのだ。 それが信長の腕に抱きしめられ安心したことで明るみにでてしまった。 今更ながらに蘭丸の指先を震えが走ってゆく。 「憎き謙信の子なれど、お蘭を無事に帰したことには恩義を感じる。・・・越後進軍の 際にはお蘭は安土にいるがよい。勅使も他の者にやらせる故・・・」 「上様・・・ありがたき幸せにございまする」 蘭丸は信長の腕の中で深く頭を下げた。 天下を治めようとする信長の懐の深さに蘭丸は助けられた思いなのだ。 「したがお蘭、罰は受けてもらうぞ」 信長は蘭丸の顎を指で掴んでくい、と上へ上げさせた。 まるで悪戯っ子のように口端を上げた信長の顔を見た蘭丸の目が軽く見開かれる。 「まずはひとつ、しばし安土を出ることは許さぬ」 「はい・・・」 蘭丸は肯定の頷きを一度返した。 これは仕方がないことだと思っているからだ。 間者としての情報を持ち帰ることができず無駄骨を折らせた上に、蘭丸に傷ひとつ つけてはならないという信長の命令を些細とはいえ違えてしまったのだ。 本来ならば蘭丸についてきた武将たちの領地取り上げくらい信長が行ってもおかしくはない。 その勘気を蘭丸が安土から出ないでいるだけで収めてくれるというならば安いものだった。 「もうひとつ、・・・そなたの口で、これを治めてくれぬか?」 言われた先には信長の半分ほど勃起した摩羅がある。 「・・・・・・!」 蘭丸は頭にかぁっと血が上っていくのを感じた。 そんな蘭丸に信長はくっくと笑いを漏らしてしまう。 「久しぶりにお蘭の匂いを間近に感じたせいか、九九を数えても萎んでくれそうにない。 されど、旅から戻って疲れているそなたを抱くのも気が引ける。それ故、その可愛い口で 治めてくれぬか?」 「う、上様・・・!蘭丸は真剣でございまするに・・・・・」 「わしも真剣じゃ。ちゃんと今回のことは不問にする故、ほれ・・・このままでは湯殿に 漬かれぬではないか」 信長は促すように蘭丸の唇へ人差し指の甲をそっと押し当てた。 蘭丸が気負いすることないようにと信長なりの気遣いなのだ。 何もしないで許されたとあればまた寵愛を笠にしたと蘭丸は悔やむかもしれない。 いや、悔やむだろう。 だからこそ償いを用意してやらなければならなかった。 蘭丸の性格をよく知っている信長だけの気遣いだ。 「・・・・・上様には甘えてばかりでございまする」 「何を言うか。もっと甘えてもらいたいとわしが言うても鼻にもかけてはくれぬつれない花が」 信長はもう一度蘭丸の顔を見つめた。 蘭丸もまた信長の顔を見上げそこから視線を外そうとはしなかった。 「ほんにわしはどうしたらそなたが喜ぶのか、そればかりを考えておる。答えがでた ことなどないというに甘えてほしゅうて仕方がないのじゃ」 「・・・・もったいないお言葉でございまする」 蘭丸はようやく口元を笑ませ、その花のような顔を和ませた。 そして信長の摩羅に手を添えるとそっと唇を近づけてゆく。 「失礼致しまする」 まずははくっとくびれまでを口に収めた。 そしてちろちろと舌先を動かして先端を舐めると、一度離してから裏筋に舌を這わせた。 半勃ちだった信長の摩羅はしだいに膨れてきてその角度を上へと広げてゆく。 「・・・っ、ん・・・・」 しなやかな指先で玉袋を揉みしだくとさらに形は雄のそれへと変化していった。 大きく堅くなったそれは蘭丸の口では含みきれず、唾液が顎先を伝って浴室に落ちる。 それも気にせずに蘭丸は信長の怒張を舌で、唇で、指先で愛撫していった。 信長はだんだんと息を荒くしていくと蘭丸の表情にさらにぶるりと身を震わす。 目を眇めて己の股座に顔を伏せ、摩羅を咥えながら種を啜る蘭丸の表情が 信長の精を煽るのだ。 信長は蘭丸の背をするりと撫でた。 湯気で温まった肌はほのかに赤く天女のような滑らかさだった。 「うむ・・・お蘭、飲んでくれるか」 「っ、・・・・はい、上様・・・」 血管を浮き立たせどくどくと脈打つ肉棒から口を離した蘭丸が答える。 そして太く勃起した竿の先を唇で食むと両手で摩羅をしゅっしゅと扱き出した。 「・・・ぬ、・・・・ぅ」 信長の眉根が寄る。 射精感が高まったと思った瞬間、信長は蘭丸の口内に熱い飛沫を放った。 「・・・っ、ん!・・・・・ぅ」 喉に液体がぶつかる感触に蘭丸は身体をびくりと震わせ、思わず唇を離してしまう。 しかし信長の精液はまだ止まることなくびゅくっと蘭丸の顔を汚した。 「・・っ、・・・けほっ・・・・」 口内に吐き出された白濁の液体を飲み込んでから蘭丸がむせ出す。 信長は一度大きく肩で息をすると気持ちよさげに片目を細めた。 そして鼻梁や顎に自分の種をまとった蘭丸の髪を梳く様に撫でる。 「・・・お蘭、いつまでたってもこれは下手だの」 信長の口元がくっくと笑った。 「どうしても・・・驚いてしまいます・・・」 言われた蘭丸は顔を赤くして言い訳した。 蘭丸は他の小姓のように吐き出される精液をすべて上手く飲み込めた事がない。 喉にあたる感触につい逃げ腰になってしまうからだ。 信長は顔にかかる姿も色めいていてよい、と言ってくれるが蘭丸は早く 上達したくてたまらなかった。 「上様、もう一度やらせてくだされませ!今度は蘭丸、ちゃんと全部飲みます故・・・」 「ふぅ・・・・・どうやら長丁場になりそうだ。続きは風呂から出た後にしよう」 そう言って信長は蘭丸を抱えると湯船にざぱんっと飛び込んだ。 勉強熱心なのはいいが風邪を引きそうだ、と付け加えて笑う信長に蘭丸は唇を窄ませた。 |
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