Original Boys Love Novel. かずあやシリーズ

NEXT or EXIT?
EXTENTION --2







Excuse me,Baby.

Do you believe in lover?
Do you a little farther on next?
Or what chase up exit and you get away from seacret?

OK,Baby.
You must opt in favor of NEXT or EXIT.

NEXT or EXIT.





「それはお前が悪いだろ、あやか」
敦志にそう言われ、あやかは小さく”うぅっ”と唸った。
行きなれたバーの一階、カウンターに並ぶスツールへ座って二人は話をしている。
話題はというともちろん先ほど見てしまった和輝とクラスメートの様子について、なのだが。
ショックを受けて和輝に会わず喫茶店を出てきてしまったあやかに対し、
敦志は冷静にお前が悪い、と告げたのだ。
「あやかが何を見てどう感じるかなんてのはあやか次第だろうけどな?奴には奴なりの
理由ってのがあるんだろうに、それを聞かないうちに物事を結論づけるのは早いんじゃないか?」
ごもっともな正論にさらにあやかが小さくなる。
いまさらながらに思ってみれば、確かに和輝は店の前で女の子と腕を組んでいたが
喜んでいるような様子は見せていなかった。
「とにかく、言い訳くらいさせてやれ。あやかがあいつに愛想をつかして
俺のモノになるっていうならまた話は別になるけどな?」
「えっ、ちょっと・・・愛想つかされることはあっても、つけることはないよ」
あやかは敦志の言葉に眉根を寄せると、少し拗ねた様な表情で唇を尖らせた。
そう、愛想をつかれることはあっても、自分からつけることはないとあやかは思う。
女性が苦手な根っからのゲイである自分に対し和輝はノンケの人間だ。
そんな彼を好きになってしまったことがもともとの過ちだったのではないかと、時折考える。
彼に焦がれるのであれば、彼の幸せを一番に考えるべきではなかったかと。
だとすれば、自分と付き合うよりもやはり相応な女性と恋愛したほうがいいだろうと。
考え出すとぐるぐる底なし沼のようにはまってしまうのがあやかの悪い癖だ。
「だったら尚更きちんと話したほうがいいんじゃないか?」
「う・・・ん・・・」
あやかはポケットから携帯電話を取り出した。

あやかが自分に自信をもてないのは、いつものことだった。
セックスだけはやけに経験を積んでいて上手いかもしれない。
しかし自分が恋愛下手だということは過去の経験からもわかっていた。
本当は和輝はただ、若い故にあやかとのセックスに引きずられているだけじゃなのか。
好きという気持ちが快感からきたものじゃないと言い切ることなど、果たしてできるのだろうか。
そんな疑問の繰り返しで、和輝が一時の迷いではなく自分を好きだなんて
あやかにはけして思えないまま今日に至った。
「・・・・・あ、れ?着信履歴・・・」
ポケットから探り出した携帯には、着信を示す赤い点滅が繰り返し表示されている。
二つ折りのそれを開き中を確認したあやかの表情が一変した。
「なんだ?・・・・ああ、小僧からじゃねぇか」
そのあやかの様子に敦志が横から携帯を覗き込んで呟く。
先ほど、喫茶店を後にした時間と同じくらいの着信履歴が数回。
それは和輝があやかを心配してかけてくれたことを意味していた。
思わずあやかの頬が緩んでしまう。
どうしてこんな些細な事がこんなにも嬉しく感じてしまうのだろうか。
無機質に映し出された着信履歴。
けれどそれは確実に暖かさを持ってあやかの気を落ち着かせてくれる。
「・・・和輝、心配してる・・・かな」
あやかの言葉に、頬杖をついたままで敦志がちらりと視線を向けた。
「そりゃあ、そうだろうな。顔見せてやれよ。奴の家、近いんだろ?」
言われてすぐ弾けたようにあやかが動き出す。
持っていた携帯電話を折りたたみ、ポケットに入れようとしたところでお金を払っていないことに気付き。
「あ、お金・・・・えっと、財布は・・・」
携帯電話をカウンターに置くと今度は財布を探すために慌てて。
そんな様子を小さく笑ったまま見ていた敦志が、あやかの背をぽん、とたたいた。
「いいよ、俺がおごってやるから。早く行かないと遅くなるぞ?相手、高校生だろ」
この上なくいい人ぶりを発揮する敦志にあやかの顔が笑顔になる。
「ごめん、お詫びに次回僕がおごるから・・・ありがとう」
礼もそぞろに扉へと走り出す。
もう会いたくて仕方がないといった雰囲気が、全身から出ていた。
和輝に会ったらまず、何も言わず店を出てきてしまったことを謝ろう。
それからちゃんと和輝の気持ちを聞いて。
自分の気持ちもしっかり伝えられるように。
あやかは何度も繰り返しながら敦志のいる店を後にした。

「・・・・・・・ったく、ありがとうなんて言葉を聴きたいわけじゃないんだがな」
一人だけ残されて手持ち無沙汰になってしまった敦志が苦笑を漏らす。
もともと今日は今夜の相手をハントしようと溜まり場になっているプールバーにやってきたのに。
なんだかそんな気分ではなくなってしまっていた。
「・・・いつまでもあやかの事泣かすようなら、奪うぞ・・・小僧」
小さな呟きはマスターにも聞こえぬ程度で、ざわつく店内ではすぐに掻き消えた。
---------------ブルルルッ。
そこへ突然、携帯電話のバイブレーションが震える音が聞こえてくる。
敦志は少なからず驚きながらも自分のポケットを探って携帯を取り出す。
「・・・・あ?」
だが、それは敦志の持つ携帯のバイブレーションではなかった。
もう一度音のする方向を確かめながら携帯を探すと、カウンターの上で小さく振るえるそれが見つかった。
「おいおい、あやか・・・携帯忘れんなよ・・・しかも小僧からかよ」
小さなウィンドウから垣間見える名前は、和輝のイニシャル「K.F」になっている。
迷いながらも敦志は携帯を取り通話のボタンを押した。
あやかは今出て行ったばかりで、和輝に会うにはあと30分はかかるだろうから、
すれ違いになるよりは電話に出て引き止めておいたほうがいいだろうと。
携帯が通話になると電話の先の声は余裕のない色で彼の名前を呼んだ。
『・・・あやか!?なんかあったのか、大丈夫か?』
約束をすっぽかされたことに怒るのではなく、相手の無事を確かめるあたり似たもの同士だと敦志は思う。
「・・・もしもーし。小僧だよな?」
『・・・・!』
電話の先の和輝が息を呑むのを感じる。
『なんで・・・あやかの携帯だよな?』
声音が怪訝そうなものに変わったことに苦笑をもらしながらも敦志は肯定した。
「そうだ。あやかの携帯で・・・」
『なんであんたが出るんだよ、あやかと一緒にいるのか!?』
忘れていったから、と告げようとした矢先に和輝が口を割ってきた。
「あー・・・まぁ、確かに一緒に・・・」
---------------ブツッ!
いたけれど今は和輝に会うために走っていってついでに携帯を忘れていったから
取りに来いと伝えて欲しい・・・と、全部を伝える前に電話は一方的に切られてしまった。
「・・・にゃろ、人がせっかく親切心で・・・」
敦志の手が小刻みに震える。
人の話を最後まで聞かないところまで似たもの同士の恋人だ。
そう毒を吐いて敦志はマスターにバーボンのお代わりを頼んだ。
あやかの携帯電話は再び音が鳴ることなく、カウンターの上へと戻されていた。



和輝はあやかと待ち合わせしていた喫茶店で苦虫を噛み潰した顔をしていた。
視線は手にある携帯に釘付けで、どうにか事態を飲み込もうとしても頭の中はぐるぐるしている。
「・・・なんで、あいつが」
そう、問題は携帯にでたのがあの男だということだった。
以前あやかとセックスフレンドだったという敦志という男。
彼とはあやかを取り合ってビリヤード勝負をしたことだってある。
今でも友達付き合いがあるのは知っていたが、自分との約束を
すっぽかしてまで敦志と会っていた事実が和輝にはどうにも解せなかった。
あやかは今まで一度だって約束を破ったことなどなかったのに。
それとも、破らざるを得ない理由でもあったのだろうか。
疑問はだんだんと疑惑に変わってくる。
「・・・・そういう、ことかよ・・・」
和輝の表情がさらに険しくなった。
胸の中をよぎってはかき消す、ひとつの仮定。
あやかが。
敦志と。
よりを戻したという可能性。
ざわりと胸の中を黒い塊が蠢くのを和輝は感じた。
自分にはもう興味がなくなってしまったのだろうか。
だから敦志と一緒にいたのではないだろうか。
頭から血が引いていくような感覚に襲われながら、和輝は会計をして店を出る。
敦志と一緒にいるあやかが再びこの店に戻ってくるとは思えないからだ。
時間はもう、約束から2時間半を過ぎていた。

繋がらない電話。
いっそ繋がらなければよかった電話。
どちらほうがマシだっただろう。
和輝にはあやかを失う事など考えたことすらなかった。
その巨大な喪失感が現実味を帯びてじわりじわりと精神を侵していく。
「・・・あやかが・・・決めたことなら・・・」
仕方がないと。
自分を宥めるようにそう言い聞かす。
大事なことはあやかが幸せになることであって、今でもそれは変わらぬ願いだった。
俺が幸せにしてあげたい。
あの日確かにそう思ったのに。
雪の降る中両思いになった時のあやかの笑顔が、もう他の誰かのものになってしまう。
あまりにも予想していなかった展開だった。
好きなのに。
一緒にいれなくなるかもしれない不安。
好きだから。
あやかが思うままに生きて幸せになってほしいと思う愛情。
交錯する思考は漠然とした胸の痛みに沈んでいった。



和輝が視線を地に落としたまま家の前まで歩いてくると、そこにはあやかの姿があった。
途中で携帯を忘れてきたことに気づいたがあやかだったが、電車に乗って
しまったことと時間が遅くなってしまうということでそのまま和輝の家へとやってきたのだ。
過去に一度だけ来た事のある和輝の家。
見上げるとまだ部屋に灯りがついていなかったので、あやかは門の前で待っていた。
「・・・和輝!」
待ちかねた恋人の姿に、あやかの頬が自然と笑む。
しかし和輝はその呼び声にびくりと肩を揺らして足を止めてしまった。
「待ってたんだ。あの・・・話したいことが、あって」
互いの気持ちを確認しあって、自分の中にある不安を取り払ってしまおうと決めた。
あやかは和輝の言葉が欲しかったのだ。
だから自分の気持ちもちゃんと伝えて、女の子のほうがいいと言われたら潔く身を引こうと思っていた。
「あ、その前に謝らなくちゃだよね・・・」
喫茶店で、待ちぼうけを食らわせてしまったことに。
あやかが謝ろうとしたその矢先、和輝は再び歩き出すと目の前を通り過ぎようとする。
「・・・か、和輝?」
引き止めようとする指先を、和輝が無言のまま片手で払いのけた。
ぱしん、と。
冷たい渇いた音が誰もいない夜の道に響く。
驚くあやかに和輝は眉間へ皺を寄せたまま一瞥を投げた。
「話なんか・・・聞きたくない」
そして立ち尽くすあやかを残して逃げるように家の中へと入ってしまう。
初めての、拒絶。
あやかは呼吸が苦しくなるのを感じた。
何度も電話をかけてくれたのは夢の話だったのか。
和輝に好きだよと伝えようと思っていた唇は僅かに開いたまま小刻みに震え出す。
やはり、和輝は女の子のほうがいいと思っているのかもしれない。
喫茶店で見た彼女ともう付き合い始めているのかもしれない。
男と付き合った自分を嫌悪してもうあやかには二度と会いたくないと思っていたのかもしれない。
次々に浮かんでくる悪い考えがどれも否定することができず思考を埋めていく。
「・・・い、たっ・・・」
あやかは両手で左胸を抑えた。
呼吸なんか出来ないくらい好きなのに。
今は胸が痛くて、溢れそうになる涙を必死に堪えるので精一杯だった。
別れたほうが彼のためだなんて、傲慢な考えを持っていた自分に腹が立ってくる。
別れられないくらい好きなのは自分のほうなのに。
あやかは、もう開かれることのないドアから視線を逸らした。
胸が痛い。
胸が激しく痛んで、呼吸をうまくさせてくれない。
和輝の事を想うだけでこんなに動揺してしまうなんて。
泣かないように唇をぐっと噛んで、あやかは家の前から走って消えた。


■ NEXT or ■ EXIT