Original Boys Love Novel. かずあやシリーズ

NEXT or EXIT?
EXTENTION --1







Excuse me,Baby.

Do you believe in lover?
Do you a little farther on next?
Or what chase up exit and you get away from seacret?

OK,Baby.
You must opt in favor of NEXT or EXIT.

NEXT or EXIT.





清く正しく美しく。
だいたい人間が目指すものなんてお決まりの綺麗事で。
それでもそれを目指していた。
彼に、心の全てを持っていかれる前までは。

普通の高校生、藤臣和輝はホモのアダルトビデオに男優として出演している
小田切あやかという男性と恋人同士になった。
平穏な日常を、ありきたりな人生を希望していた彼を変えたのがその恋人で、
和輝は惹き合う気持ちに気づいて「優等生」というレールから飛び降りた。
精悍な顔立ちを持ち勉学やスポーツなどにも非凡な和輝だったが、彼は信じていたのだ。
人に指をさされる生き方よりも決められた道に沿って歩いたほうがいいと。
だが気づいてしまった。
どうしようもなく焦がれる気持ち。
そしてそれを持て余して相手にぶつけ、傷つけ、後悔とともに競りあがる苛立ち。
不器用ながらも大切にしたい真剣さ。
一緒にいたいとただ溢れる切ない恋情。
自分が築いてきたものを壊してでも愛したい人物が出来てしまったから、
二人は惹かれあうままに恋人同士になったのだ。



「ねぇねぇ、藤臣クン最近チョーかっこよくなったと思わない?」
「あー、思う思う!マジイケてるよね、なんてーの?男っぽくなった?」
「わかるぅ、目とかたまにセクシーでさぁ。彼狙いの子、さらに増えたって噂らしいよ」
学校帰りの女子高校生三人組がそんな話をしながら喫茶店の近くを通りがかる。
和輝が男っぽく、かっこよくなったのには理由があるが彼女たちはそれを知らない。
彼女たちは和輝のクラスメートで、彼の友人を通じて会話する程度の仲だったのだ。
彼を変えたのはこの世でただ一人の、最愛の人。
しかしそれはけして明かすことの出来ない秘密でもあった。
「・・・あれぇ?なに、池田じゃん。これからオケるんか?」
ちょうど喫茶店のガラス窓の前で、高野が彼女たちに声をかけた。
彼の後ろには葛篭貫と和輝の姿もある。
藤臣和輝。
葛篭貫志郎。
高野雅史。
この三人は中等部からの付き合いで、高校に上がっても偶然同じクラスになったため
いまだにつるんでいる親友同士だ。
先ほど彼女たちの共通の友人というのも彼らのことだった。
そんな三人の姿を見て、彼女たちは急に色めき立った。
かっこいいと噂をしていた人物が三人組の中にいるからだ。
和輝は背は同級生たちから見たら高いほうで、スポーツが得意な彼らしく均整がとれた
筋肉が全身のスタイルをよくしている。
意思の強そうな精悍な造形は笑うと歳相応にかわいくなり表情も優しく変化した。
純粋に格好いいと評される和輝の、時折見せる少し切なげな熱情を剥き出しにした姿は、
単純な人形でも中身がからっぽな顔がいいだけの男でもないと物語っている。
ここ数ヶ月で彼は同級生の男子から男に印象を変えたのだ。
一瞬和輝に見とれていた彼女たちは慌てて彼らに近づいていく。
「ううん、これからハコ行って踊ろうと思ってたんだ。週末だしさァ」
「あ、なんなら藤臣クンたちも行かない?ほら、あたしらも三人だし」
三人のうちの二人が身を出して和輝を取り囲んだ。
耳の横に造花をつけた女の子に至っては和輝の腕をとって自分の腕に絡ませてしまっている。
高野と葛篭貫は互いの顔を見合わせて肩を竦ませた。
どうやら助ける気はあまりないらしい。
「・・・あ、っと。悪い。これから待ち合わせなんだ」
和輝は困ったように眉根を寄せながら彼女たちにそう告げる。
そう、彼はあやかと待ち合わせしていたのだ。
今まさに目の前にあるガラス先の喫茶店で。
恋人同士になった和輝は毎週のように週末はあやかのマンションで過ごしていた。
普段は自分も学校で、あやかも大学生なのであまり時間が取れないでいる。
だからこそ彼のもとへ早く行きたくて、長い時間を共有したくて、こうして
説明することすらもどかしかった。
「えー?待ち合わせ?そんなのブッチしてメルっとけばいいじゃん」
さすがに彼女たちも一度くらい断っただけでは引いてくれない。
和輝は視線をそらしている親友たちにローキックをお見舞いした。



時を同じくして、喫茶店の中ではそのやりとりをガラス越しに見ている人物がいた。
もちろん和輝の恋人、あやかだ。
赤茶に染めた柔らかな髪と端正な顔立ちの美青年で、ただコーヒーを飲んでいる姿も
どこか色香を放っているようだった。
「・・・かず、き・・・」
かしゃん、と。
音をたてて持っていたカップをソーサーへと戻す。
その表情はショックを隠し切れない様子を浮かび上がらせていて、先ほどまでの
優雅な一面はなりを顰めてしまった。
「・・・・・・・・・・・・」
あやかは息を飲んだ。
自分の動悸が早くなるのを妙にリアルに感じる。
もともとAV男優という肩書きを持つあやかは高校生の和輝に引け目を感じていた。
自分がノンケである彼を同性愛という禁忌に足を踏み入れさせてしまったと、
今でも心のどこかで後悔しているのだ。
好きだけれど、好きだからこそ彼は自分と同じラインに立って欲しくなかった。
公園でも手を繋ぐことすら出来ない秘めた恋は彼を不幸にさせてしまうのではないかと。
一緒にいる心地よさと同じくらいの不安をあやかは抱えていた。
そして今目前に晒された同い年の女の子と腕を組む彼の姿を見て、さらに不安が膨らんだ。
あやかの贔屓目を抜かしても和輝はモテそうな容姿をしている。
そんな彼を女の子が見逃すことはないだろうとは薄々感じていた。
もともと和輝はノンケなのだ。
女の子に腕を絡まれて悪い気などしないだろうと思う。
それでも実際に隣に並ぶ姿を見てみると、やはり和輝の恋人はかわいい女の子が
似合いなのではないのかと強いショックを受けてしまった。
そう、この風景こそが自然な形なのだ。
やはり彼は自分のような人間が汚していい人物なんかじゃない。
そう、あやかは痛感した。
「・・・・・出よう」
自分に言い聞かせるように呟くと、千円札と伝票をレジに置いて彼らがいるちょっと先の
出口から見つからないよう静かに店を出る。
動揺していたのは明らかだった。
視線の先から零れてしまった相手の姿が、いつまでも瞼の裏にこびりつくようであやかは唇を噛む。
どうしてあんな風景を目に捕らえてしまったのだろう。

愛してる。
ただ、それだけのことが今はこんなにも辛い。
早く別れたほうがいいのだろうか?
自分の下へと一度でも降りてきてくれた彼のために。

・・・あやかは足早に駅へ向かうと、カードを差し込んで改札を抜けた。



和輝はといえば、そんなあやかの動向を知る由もなく彼女らに腕を取られたまま困り果てていた。
「・・・俺オケりてぇ」
和輝に再びローキックを見舞われた葛篭貫が仕方なしに助け舟を出してくる。
「あ、俺もそう思ってたとこ。おっし、行くぜ池田ぁー!」
高野もその小手先芝居に乗って和輝の腕を取る華付き女子を自分のほうへ引っ張った。
同じように葛篭貫も他の二人の腕を取って和輝が向かう先とは反対方向へ歩き出す。
「え、なんだよ、高野ウゼェー!ありえねぇ!」
慌ててクラスメートが抗議をするがもちろんそれを受け入れるわけもなく。
「じゃ、そゆことで。よろしく伝えといてくれ」
事の次第を一部隠したままだが知っている彼らが和輝に目配せする。
ほっとしたように表情を緩ませた和輝も片手を上げてその姿を見送った。
時間はまだ4時半。
あやかと約束した時間を少し過ぎてしまったが問題ないと和輝は踵を返す。
待ち合わせの喫茶店の前で思わぬ手間をかけてしまったけれど。
きっと彼は笑顔で待っていてくれるだろうと和輝の足は知らずに急いだ。
「いらっしゃいませ」
店内へと入ってきた和輝に店員が声をかける。
待ち合わせだと告げると店員は思い出したように客席へ視線を走らせた。
「・・・あ、あら?お客様、もうお帰りになったようですけど」
さきほどまであやかがいた席。
そこにはもう誰の姿も見ることはできなかった。
店員が指差した先を自ら確認すると和輝は軽く首を捻った。
お帰りになったということは、確かにあやかが先に来ていたのだろう。
そして今はその姿がない。

前に一度、理由を教えてもらえないまま別れを告げられたことがあった。
柔らかな容姿に反して意外に頑固な面を持つあやかのことだ、先ほどの自分の
姿を見ていて何か勘違いをし、そして行動に出たのかもしれない。
言い知れぬに不安にかられた和輝は、店員に礼を告げ再び街道へと出戻った。
「・・・あやか・・・」
名前を囁いても視線上にはその端麗な容姿を確認することはできない。
制服のポケットを探って出した携帯のショートウィンドウには、着信もメールもなかった。
和輝はそのまま携帯を開くと、素早く短縮の一番を入力する。
無論、その番号の相手はあやかだった。

・・・1コール。

・・・・・・2コール。

何度かかけなおしても結果は同じ、留守電の決まったメッセージが返ってくるだけだった。
急用が出来て慌てて帰ったのかもしれない。
携帯電話を家に忘れてきたから繋がらないのかもしれない。
理由なんていくらでも簡単に想像がつくのに。
それなのにただ連絡が取れないというだけで、和輝の不安が広がった。
「なんだよ・・・連絡つかない携帯なんて、意味ないじゃないか」
二つ折りのそれを音を響かせながらたたむと、和輝は柳眉を中央へ寄せた。
何事もないことを、あやかが先ほどのやり取りを見てないことをただ祈る。
不安になんかさせたくない。
不安にさせるために恋人になったわけじゃない。
和輝は思い切るように息を深く吸うと、静かに喫茶店店内へ戻っていった。
もう一度戻って来るかもしれない。
そう、信じて。



互いを思う気持ちは本物で。
幸せになってもらいたいと二人ともがそう思っていた。
ありきたりだけれどありきたりでない恋愛。
それでも本気だった。
好きという気持ちに偽りなどありえない。
けれど。
今。
二人の心に、微妙な風が吹き始めた。


■ NEXT or ■ EXIT