絶対無敵に恋人志願


Vol.12 Fake love


夜な夜な佐渡里のベッドへ潜り込む姫嶋に、戸惑いつつも誘われるとどうしても
断れず、彼の思うがまま、最後には己の欲望のまま強く激しく抱いてしまう。
抱く度、己に馴染む彼の身体が疎ましくもあり、愛しくもあった。
繰り返されるこの行為に、どんな意味があるのだろうか…。
体内を掻き回され揺さ振られ、必死にしがみ付いてくるあの細い腕が甘く、
そして痛く佐渡里の心をも揺らす。
快感を貪りながら、縋るように見つめるあの濡れた瞳の奥に、果たして自分は
映っているのだろうか?
欲情の中、時折チラリと見える暗い瞳に佐渡里は気付いていた。
堪え切れぬ嬌声を隠すためか、それとも佐渡里の知らぬ誰かの名を呼ぶことを
避ける為なのか姫嶋は、その美しい指を噛もうとする。
それを佐渡里は許さなかった。
叫ぶなら叫べばいい。
快感なら、それを隠さず全て俺に見せてみろ。
お前のイイ処をもっと深く突いてやる。
誰かの名を呼ぶならそれでもいい…お前がそれで解放されるのならば…。
全部、包み隠さず俺に晒せ。
そういう思いを込め、口に運ぶ彼の腕を掴み、殊更強く突き上げた。
太い熱塊に穿たれながらも、熱に浮かされたように紡がれる言葉は“好き”と“晃次”。
そのキーワードは佐渡里を、優しくもさせるが残虐にも変えた。
恋人との濃密な交わりのように甘く淫らなセックス。
身体だけのセックスなのに…。
佐渡里は錯覚しそうな自分に自嘲し、苦い想いを打ち消すよう、激しく腰を撃ち付けた。
内襞の強い収縮と細かな蠕動に、姫嶋の絶頂が近いことを知る。
離されることを怖れるかのように強くしがみ付く指先が、深く佐渡里の背を抉る。
呑み込まれそうな強い締め付けを感じ、姫嶋のスペルマが二人の腹を濡らす。
その刹那耳にした言葉を聞き、佐渡里は愕然とする。
絶頂を極めた姫嶋が咄嗟に呟いた言葉…それは“愛してる・・・”。
誰に宛てられた言葉なのか…抑えられた心は、誰かに言えぬ愛の言葉で
埋め尽くされていたのだろうか?
佐渡里は、己のスペルマを彼の体内に注ぎ込みつつ、
崩れ落ちる細い体躯を強く抱き締めた。
強い快感に意識の薄れている彼を胸に抱き、切なさと虚しさを噛締めた。
熱い滾りを吐き出し僅かに息が上がってはいるが、心はすっかり冷めていた。
彼の必死さに秘められた深い恋情を垣間見、この愛の強さが、彼が欲しいと痛感した。
まだ意識が戻っていない彼の眦から溢れた透明な雫を、佐渡里はチュッと唇で吸い、
ぐったりとした彼をベッドに横たえた。
お互いの腹を濡らした彼の残滓を軽く拭いつつ、佐渡里は苦い想いを飲み込んだ。
深く重い彼の傷を、癒してやれるのは己じゃないことを知りつつ、ただ彼の眠りが
穏やかであることだけを祈った。
まだ赤みを帯びた頬をそっと撫で、その白い裸体を上掛けで覆う。
起き上がった拍子に瞼を覆った前髪を乱暴に掻き上げた佐渡里は、
背中にピリッとした痛みを感じた。
さして痛くもないはずのその傷が、佐渡里の心をジクジクと熱く深く抉っていった。




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