<神様なんて大嫌い>
STAGA 21 爪を掠めた気持ちの行方
「・・・・もう、二度と俺に近づかないでくれ」
口付けの後にそう、樹が告げた。
俺の問いに対する答えは一度だって口にしなかったけれど。
身体全体が、俺を拒否していた。
「樹・・・・・」
俺が手を伸ばした瞬間、もう樹の姿は視界から消えるように小さくなり始めている。
走り去る背中がやけに綺麗に見えて、やけに切なく見えて。
俺はただ、打ちのめされた気分のまま自分の恋心を理解した。
俺のほうがアイツに愛されたいと願っているんだ。
それでも、もう後の祭りだった。
入り組んだ住宅街はすぐに樹の姿を隠してしまって、俺はただ空気を掴むしかなかった。
手の中にはさっきまでの樹の温もりが残っているのに。
もうアイツの瞳に俺を映してはくれないなんて想像することすらなかった。
最初はただ好奇心と悪戯心でちょっかいをかけてやるつもりだったんだ。
いつも人を見下したような顔をするあいつを堕としてやりたいと思っていたんだ。
だから俺は気づいてなかった。
俺が真実欲していたのはアイツの本当の笑顔だってことに。
心の底から笑えるような環境に樹を連れ込んだら、アイツはどれだけ綺麗に笑うんだろうなって。
それを作れるのは俺だけだったらいいなって。
そう、気づいた途端に猫はいなくなってしまった。
なんて軽率な自分。
お手軽な恋愛ばかりを嗜んで自分は恋愛上手だと思い込んでいた。
蓋を開けたらこんなにも不器用で好きな奴に嫌われることばっかりしていたってのに。
まさにピエロのような自分。
泣きたいのに泣くことすら許されない存在。
セックスする、しないなんて関係ない。
ただ樹を手に入れたかった。
樹に自分を見ていてもらいたかった。
金勘定じゃない恋愛を教えてやるつもりだったのに、教えてもらったのは俺のほうだった。
一瞬だけアイツの気持ちを掴めたと思った瞬間には溢れる水のように指先から零れていった。
掴もうとしてももうそれは握り締められるものじゃなくて、必死になって捕らえようともがく自分だけが残る。
「・・・・・・・・樹・・・・・・・・」
声が小さく漏れた。
「・・・樹ッ・・・・、樹・・・樹!」
何度叫んでも名前の主は姿を現してくれなかった。
時間が戻せるなら、二度と手を離さないのに。
・・・後悔。
それは神が俺にくれた、唯一の贈り物。
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