<神様なんて大嫌い>

STAGA 20 潤んだ指先が二人の間に空を埋める


動揺していた。
図星を、言い当てられたから。
悔しかった。
そのことを今更気づいた自分に。

きっと俺の顔はおかしいくらい捻じ曲がってるだろう。
加納さんに言われた言葉がひどく心を揺さぶって何度も頭の中にエコーがかかる。
”お前は俺に愛されたいと願っているんだ”、なんて。
記憶の中から今すぐ消してしまいたい言葉ナンバーワンだ。



・・・・・・・そうだよ、きっとそうだよ。
好き。
そういう感情なんだと思う。





もっとアンタに愛されたい。

もっとアンタが欲しい。





自分でもバカバカしくなるくらい心の底ではそう願ってる。
多分きっと、最初に出合った頃から予感はあったんだ。
だから気持ちが傾く前にアンタが嫌いだって牽制してたんだ。
アンタのことを嘘吐きだからって。
アンタは別の誰かを気にしてるって。
それなのにどんどん俺の中に入り込んでくるなんて卑怯だろ?


恋とか愛とかわかんねぇよ。
でも欲しいって欲望だけは理解できるんだ。
俺はアンタに見つめられたい。
俺はアンタが俺しか見ていない状況にいないことに、きっと、苛立ってたんだ。






それがさぁ、
加納さんの言う好きってことなんだろ・・・?








なぁ、それが好きって意味で、正解?





なんて。
意地悪な神様が答えてくれるはずなんかない。

そうなんだ。
俺は望んでも手に入らないものがあるってことを知ってる。
どんなに渇望しても砂漠に植物が生えないように、与えられる対象は限られている。
神様に選ばれなけりゃ欲しいものすら手に入らない。


だから俺はあえて自分から手を離す。
手放したくない掌が相手から離されてしまうのを防ぐために。
望まなければ手に入らなくても問題ない。
そうすることは要は自己防衛ってことなんだろ?
それなら、セックスと同じ人間の本能ってやつなんだ。
自分を守る以外の最上級項目なんて俺は知らない。


俺は加納さんの首根っこを捕まえて自分の顔のすぐ近くへと引き寄せた。
そして少し下から思い切り睨みつけながら呟きを漏らす。
「・・・・・・・俺がこの世で一番嫌いなもの、教えてやろうか?」
そう言ったら、加納さんの眉根が中央に寄せられた。
それを見た俺の胸がズキン、と痛みを訴える。
でもそんな痛みには気づかない振りをして、俺は加納さんの唇に自分の唇を重ねた。
少しだけ背伸びをするようにしてぐっと皮膚を押し付ける。
怒鳴りあっていたせいか唇は乾いていたけれど、AVで相手になった他の誰よりも興奮するキスだった。

「・・・コレだよ」
口付けを解いた後、そう告げた俺に加納さんが目を眇めた。

どんどんと俺の動悸が早くなっていくのを感じる。
最初は飄々としている加納さんが気になっていた。
それから子供のように風景を見つめる表情がすごく気に入った。
今も触れた唇が思った以上に気持ちよくて戸惑ってるけど惹かれてる。

欲しい。
欲しい。
欲しい。


でも怖い。



・・・俺は加納さんの胸倉から手を離すと、そのまま甲で自分の唇を拭った。
「どんなに熱い唇だって、くっついたら必ず離れていく。離れることが前提でくっつくんだ。
・・・・・・・ずっとくっついていることが出来ないなら、最初から離れたままのほうがいい!」
そう言い切った俺は、加納さんを見たまま肩で息を繰り返した。






いつか手が離れてゆくのなら。



アンタの唇が他の誰かの名を呼ぶのなら。










アンタのこと。








好きになんか、

ならなきゃ良かった。





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