<神様なんて大嫌い>
STAGA 19 僕らは思うその唇よりも熱い塊に胸が焼け付くような痛みを感じることを
捕まえた樹の身体を強引に自分に向かせて抱きしめた。
女なんかより全然広いその背中は綺麗に腕の中に納まるなんてことはなかったが、
それでも自分の出来る限りの力で抱きしめた。
そうでないと、
いつでもコイツを捕まえておかないと、
コイツは簡単に檻を破って飛びだって行ってしまう。
理由なんかわからない。
でもそれが嫌だと思うから俺は樹を抱きしめたんだ。
「・・・・・・・樹、逃げるな。ちゃんと理由を言ってくれよ」
抱きしめたまま腕を解くことなく囁く。
頬に触れる樹の髪は細くしなやかに俺の皮膚を擽った。
「何を?どんな理由を?わかんねぇよ・・・・意味、わかんねぇ」
「お前が、何で・・・怒ったのか」
そう告げた瞬間、腕の中の樹がぴくん、って反応した。
・・・・・・実際、俺はもうかなりヤバイと思う。
こんな些細な仕草がとてもかわいいと思ってしまうからだ。
俺はもっともっと強い力で抱きしめたくなるのを我慢しながら、樹からの言葉を待った。
「怒ってって・・・?そんなの、別に、どうでも・・・」
つっかえながら言葉を返してくる樹に俺はごちん、とこめかみをぶつけてやった。
「バカ。・・・・どうでもよくないから俺は聞いてるんだ」
俺はゆっくりと息を吸い込んだ。
心の中に湧き上がってきた疑問はどうしても答えを知りたがっている。
「なぁ、樹。お前、なんで俺が降りるっていった時、あんなに怒ったんだ?
俺がお前とセックスしたくないって一度でも言ったか?言ってないだろ?
・・・・・なぁ、どうしても答えが出ない疑問があるんだ。答えてくれよ」
そう言ったら、樹の身体が更に硬くなった。
甘やかして堕とすつもりが、追い詰めてどうする気なんだ、俺。
でもきっと必要なんだ。
俺達が先に行くためには、必要なことなんだ。
「樹・・・・・あそこで怒るってことは、お前は少なくとも、
俺とセックスしたいと思ったって・・・ことだろ?」
確信に触れた途端、樹の左フックが俺の脇腹に決まった。
「っ・・・・!!!」
俺は思わず呻きながら前のめりによろめいてしまう。
それを器用に避けて俺との距離を保ちながら樹は目元を赤くして激昂した。
「バカか!アンタ!・・・・・アンタとのセックスなんて金以外に目的なんかない!」
腹の痛みに加えて、なんて暴言を吐くんだ、コイツは。
俺が片目を伏せながらももう一方の目で樹を見ると、樹は唇を震わせていた。
どうしてコイツは口で文句言いながらもこんな表情を見せるんだ。
そんな顔を見せられたら俺はまた、お前を突き放すことが出来なくなる。
そんな、縋るような目で。
縋るような顔つきで。
「アンタが降りるっていったら、バイト代が流れるって思って・・・・・・」
「そんなもの、怒る理由にならないだろ?俺の代わりなんていくらでもいる。
いざとなったら坂崎さんだって自分の会社のために突っ込んでくれるだろうよ!」
俺は声を荒げて告げた。
ここが公道で真昼間で・・・・なんて頭の片隅で理解していても行動の抑制にはならない。
なぁ、お前の口から聞きたいんだ。
お前が俺の手に堕ちてきたことを。
だから言って。
俺を求めて。
「俺は金の絡みなんかナシにお前を手に入れたいと思ってるよ。
樹とセックスしたいって思ってる。恋だの愛だの教え込んで・・・・・・・」
「そんなのいらないって言ってんだろ!」
「いらないわけあるか!」
俺は思わず口を滑らせてしまった。
たとえそれが真実でも、言ってはいけないことがあることを失念していたんだ。
だからそう、樹がどう思うかも想像できずに。
俺は息を吸い込んだ。
「お前は、俺に、愛されたいと願ってるはずだ!」
そう、叫んだ瞬間。
もう俺は後悔していた。
樹の顔が強烈なほど歪んだからだ。
それを見たとき、俺の心臓が血を逆流させるほど、どくんと脈打った。
そんな表情をさせてしまった自分に胸が痛んだ。
樹の仕草の端々から感じていた気持ち。
愛されることに不器用で愛され方がわからない捨て猫の行動。
そんなのをただ、俺は解放させたかっただけなのに。
猫は尻尾を逆立てながら、心を・・・閉ざしてしまった。
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