<神様なんて大嫌い>

STAGA 17 自覚


俺はただ、唖然としたまんま樹が帰っていくのを見ているしかなかった。
ああ、これで金の絡んだセックスしなくていいんだ。
ちょっとほっとした。


・・・なんて、思う前に妙なショックで呆けちまったんだ。
だってさ、樹はあの口でなんて言ったと思う?

”・・・・・あのさ、俺とセックスしたくなかったらそうはっきり言えよ”

そう言ったんだぜ?
俺がいつ、そんな態度見せたっつーんだよ。
樹の事を想って気遣いの言葉をかけたってのに。
あー、だからガキってのは嫌いなんだ。
勝手に解釈して勝手に怒って勝手に決定して勝手に出て行っちまう。
思わず反論する余地もなかったじゃねぇか。
言い訳くらいさせろよ。
ガキ好みの甘ったるい言葉でどれだけお前の事を想ってるか切々と語ってやるのによ。
それなのに。

「・・・・・何がインポだ・・・バカヤロウ」
俺は舌打ち交じりに呟いた。
あんな傷ついた表情してたくせに、強がりばっかり言うんじゃねぇよ。
そんなに自分の弱みを見せるのはイヤだってのか?
俺は弱みを曝け出せる相手じゃねぇって言うのか?

俺が台本を握り締めたまま考え事を続けていると、扉を開けて坂崎さんが戻ってきた。
「おい、俊生」
心なしか声が低い。
自然と顔だけは呼ばれた方向に向けたけれど、俺の心はここにあらずだった。
「お前、樹に何した」
坂崎さんの言葉に俺は思わずぎょっとした。
多分、今日の話は降りるとかなんとか樹が言っていったんだろうけど。
一方的に俺が悪いって決め付けられてるのは気に食わない。
「俺は・・・・・何も・・・・・」
そう、多分何もしていないはずなのに。
なんでいきなり樹はあんなに激昂したんだろう。
「何もしてないってことはないと思うが・・・とりあえずお前、追いかけて話聞いて来い」
「えっ・・・!?」
「お前も樹も、このまんまじゃ使い物にならねぇよ。・・・・自分の顔見てみるんだな」

思い切り寝耳に水だった。
追いかけるって選択肢を俺がまったく考えてなかったからだ。
樹は帰ったけど、他の相手を呼んでこのまま撮りだと思っていたから。
それにしたって、俺は今どんな顔してるっていうんだ。
樹に誤解されたからってどうのこうのなるほどまだ仲良くもなってない。
だから感情が揺れ動くことなんて、ないはずなんだ。

「追いかける・・・」
俺は思わず言葉を繰り返した。

追いかけるったって・・・またイヤな場面見たら困るんだよな。





・・・イヤ?

なんでイヤなんだ?俺。
アイツがどこの誰と何してようが別になんともない筈だろ?

泣きっ面が見たくて落とし始めたゲームなんだ。
むしろ今の状況は願ったり叶ったりってはずなのに。
なのに。



なんで俺は、アイツが誰かと一緒にいることがイヤだなんて思うんだ?




「・・・ほら、早く行かねぇと見失うぞ」
ふいに坂崎さんの言葉が耳に響いた。
するとどうなってるっていうんだか、俺の体は勝手に走り出したんだ。



アイツのいるところへ。



アイツを抱きしめるために。





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