<神様なんて大嫌い>

STAGA 13 ぎゅっとしたくなる、瞬間


コートの中にいる樹はいつになく大人しい。
こんな場所に連れてきやがって、って罵られるの覚悟だったんだが。
どうやら樹もこの場所が気に入ったらしい。
そりゃそうだ、この場所はあまり人に知られていない俺だけの秘蔵スポットだからな。
前に偶然ドライブしていて気づいた場所。
いつか口説くときに使おうと思ってたが、こんなに早くそんな時が来るとはな。
まぁ、ここに来ると俺もさすがに神妙になるっていうか、おいそれとエロ気分にはならないわけだけど。
「・・・・・・・・・・・・・」
俺はぼんやりと光の洪水を見つめた。
行き交う車は帰りのラッシュなのか少し多く感じられる。
橋の左右は広い臨時の駐車場になっているから平日はほとんど人がいなくて静かだ。
時折一人で来てはどうしようもない焦燥感を紛らわせたこともある。
ただぼんやりと、光と水を見ているだけの空間。
それが俺はとても好きだった。
「・・・・・・・・っしゅん!」
樹が腕の中でくしゃみをして、はっとした。
悪い、思わず一人の世界に入ってた。
そう心の中で詫びを入れながら俺は両腕でコートごと包むように樹を抱きしめる。
なんだろうな、風景がそうさせるのか?
妙に樹のことを抱きしめて離したくなくなったんだ。
いくら生意気なクソガキだって、こんな空気じゃ反抗できないだろ。
ロマンチストじゃなくたってシチュエーションに酔うことは出来るんだ。
だから、なぁ?
弱い自分を認めて俺に泣いて縋って来いよ。
白旗振って降参して、俺に抱いてってせがんで来いよ。

「・・・・・あのさ、寒いんだけど。そろそろ帰っていい?」
樹の連れない言葉が響いた。
お前、マジで夢がないとかかわいくないとか連呼されるだろ。
「だからこうして暖めてやってるだろ」
「うっとおしいだけ」

カチーン。

このクソガキはどうしてこう、人の神経を逆撫でするようなことばっかり言うかね。
これだけ甘やかしてやってるってのに隙を見せたのは一度だけかよ。


・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






嘘。

だって今コイツの頬、赤くなってるし。
寒いからってそうそう紅潮しないだろ。
あー、もう、ホントにコイツ、面倒くせぇ。

「・・・・・・あのさ、俺、帰りたいって言ってるじゃん」
「・・・・・・知ってる」
「じゃあさ、なんで腕の力強くなってるんだよ」



・・・・そんなの、ぎゅっとしたくなったからに決まってるだろ。





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