<神様なんて大嫌い>

STAGA 12 性感帯


いきなり車に乗せられてどこに行くのかと思えば・・・台場だって。
なんだってそんなお決まりのデートコースを回らなきゃならないワケ?
買い物して展望台でも登って最終的にはラブホにしけこむんですかー?
って、言ってやったらホテルには行かないだと。
しかも俺に金はかけられないって、失礼にもほどがあるだろ。
一応曲りなりにも俺、顔とか体売って稼いでるんですけど。
・・・・・って、それは加納さんも一緒か。

「・・・着いたぞ」
いきなり車を止めて加納さんは支払いを済ませた。
多めの札で釣りはいらないって足早に俺を引っ張りながらタクシーから出る。
俺たちが出た途端にタクシーは急発進して走り去ってしまった。
なんだよ、俺たち黴菌扱いかよ。
ホモにも人権あるっての。
「・・・ほら、こっち」
俺がいつまでもタクシーの去った方向を睨みつけていると加納さんはさっき俺をタクシー乗り場まで
連れていったときみたいに頭を抱き寄せて歩き出した。
加納さんの愛想笑いはほんとに見ててむかつくけど、こういうときの仕草は心地いい。
なんか妙にまったり性感帯を擦り上げられてるような。
くすぐったいけど止めてほしくない・・・そんな気分。
「・・・ここ、どこだよ」
俺はそんな雰囲気に飲まれないようにぶっきらぼうな口調で呟いた。
でも加納さんはすぐに分かるって言いながらどんどんと階段を登って行くし。
すぐに分かるっていわれても、周りに建物が無いような辺鄙な場所で車を止められて
理解なんか出来るわけが無い。
かろうじて台場だってわかるのは階段登った先のほうにテレビ局のビルがあったからだ。
何にも無い道ばっかりで、階段上って引っ張られた先には眺めの橋がかかってるだけ。
なんなんだよ、木枯らし吹いたら寒いじゃねぇか。
「わっ・・・・ぷ!」
俺が文句言おうと思った矢先に加納さんは俺をコートの中に引っ張り込んで目隠ししやがった。
だからさ、アンタいつも行動が突然なんだよ。
善人面して適当に張り付いた笑顔でいるくせにやることなすこと強引だしよ。

どうせ俺のことなんて暇つぶし程度にしか思ってないくせに。

「・・・・・おー、今日は寒いからサイコーかも」
あのさ、目隠しされてるから何がサイコーかわかんないけど、俺は寒いからこそサイテーなんですけど。
アンタが引っ付いてるから寒さはそんなに感じないけど、離れたらマジ凍えるぜ?
潮風ってハンパじゃねぇ、寒い、絶対。
「じゃーん・・・・・・俺が一番気に入ってる場所だ」
ふいに目隠し変わりにされてたコートが開かれた。
そんで、俺の目の前に現れたのはビルの光とそれを映す波。
「・・・・・・・・・な、に?」
俺はやたら瞬きするしかなかった。
遥か向こうのネオンも、それを映している川みたいな入り江みたいな海の水も、やたら眩しい。
俺達がいる茶色の橋なんかまるで存在しないみたいに煌いてる。
「ただの橋だけど、景色は捨てたもんじゃないだろ?」
言われて思わず俺は素直に頷いてしまった。
なんてことない道の、なんてことないただの橋から見る、なんてことない風景なのに。
まるで子供の頃に自分だけの宝物として仕舞って置いたプラモデルみたいだ。
俺が呆けたままでいると、加納さんは顔を近づけてきてにっと笑いかけてきた。
「・・・それに人通りが少なくて誰にも邪魔されない」
ははは、と俺は愛想笑いした。
なんて陳腐な台詞。
そりゃあ邪魔も入らないだろ、こんな寒空のビルも何も無いただの道じゃ。
むしろくさすぎて台詞だけ浮いてるぜ?

・・・でも、俺の目は加納さんの顔から離せなかった。
風景を見つめて笑う加納さんの表情が、いつもの偽物みたいな笑顔なんかじゃなくって。
本当に好きなものを見るような嬉しそうな笑顔だったからだ。


戸惑うからやめろ、ソレ。
なんて。
笑顔が消えてしまうのが怖くて言い出せなかった。




子供が宝物を独り占めするみたいに、
「今」を独り占めしたかった。





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