<神様なんて大嫌い>

STAGA 10 知識と経験


俺は驚いて声が出せなかった。
てっきり殴り返されると思ってたのに、加納さんの両腕が俺のことを抱きしめてきたから。
「・・・・かの・・・っ」
慌てて突き放そうと加納さんの腕を掴む。
なんだってんだよ、都合の悪いときにばっかり現れやがって。
自分にどうにもできない事が起こって自己嫌悪してたところなのによ。
せっかくだから怒らせて殴ってもらおうと思ったのに、何抱きしめてんだよ。
「・・・・・・お前、マジで俺に口説かせろ。金じゃないセックスの仕方、教えてやる」
「なんだよそれ。いらねぇよ、余計なお世話なんだよ」
俺は眉根を寄せたまんま至近距離で加納さんを睨みつけた。
金じゃないセックスの仕方ってなんだよ?
俺とあやかを比べてんの?
アイツと同じお綺麗な世界にでも連れてってくれるってわけ?
どうせやることなんて大した変わりもねぇってのに。
「俺が教えてやる。お前がもう、強がんなくてもいいように」
・・・だから、わけわかんねぇよ。
それって金出してケツせがんださっきの男とどこが違うわけ?
よく考えてみろよ。

世の中の恋愛要素その1。
告白しました。デートしました。キスをしました。ベッドインしました。

世の中の恋愛要素その2。
愛が欲しいのでお金を出しました。キスをしました。ベッドインしました。

世の中の恋愛要素その3。
愛もお金もないので無理矢理奪ってみました。キスをしました。強姦しました。


・・・・・なぁ?
やることやってりゃ同じだろ?
なんでセックスすんのにいちいち段階踏まなきゃなんねぇわけ?
手ぇつなぐのって必須事項?
愛してるって囁くのがお約束?

あー、わかった。
俺があやかを嫌いなワケ。
僕は愛を知ってますってその緩んだ面がむかつくんだ。
きっとそれと同じだ。
加納さんのことも。
俺が愛ってやつを教えてやりますってこの人当たりのいい面がむかつくんだ。


「俺と恋愛しろ、樹。愛がなけりゃイケなくなるほど、大事にしてやる」
そう言って加納さんは誓いを立てるように俺の手の甲に口付けてきた。
それはさっき、俺が加納さんを突き放そうとして出来なかった俺の手だ。
何故か自由にならなかった、俺の手だ。
「・・・・・・・・・・」
呆然とする俺を加納さんは瞬きもせずに見つめてきた。

「お前に愛を囁けるのは、この世で一人、俺だけだ」



・・・なんだよそれ。
だったら教えてくれよ。
愛ってやつをさ。
知識で知ってても実践で貰った覚えなんて一度もないぜ?

なぁ、愛なんて笑っちゃうような単語を振りかざしてる加納さんよ。
愛を経験しなきゃ、愛なんてわかるわけないだろ?
でも経験したとしたってさ、それが本当の愛だなんて誰が教えてくれるんだ?
神様?




・・・ふぅん?
だったら俺は、神様なんて大嫌い。





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