<神様なんて大嫌い>

STAGA 7 パブリックスター


樹に席を立たれてしまった俺は仕方なくバーを後にすることにした。
一人でいたってやることもないしな。
ナンパするほど気力もねぇ。
それもこれも、全部あのクソガキのせい。
俺はそう悪態をつきながらマスターに金を支払った。
「なかなか男前連れてたじゃないか。新しいペットか?」
数枚の札を受け取りながらマスターが笑う。
「ひどいなぁ、その言い方。俺はペットなんか飼った覚え一度もないけど?」
思い切り心外、って顔して肩を竦めてみせたらマスターはつり銭を用意しながらわざとらしい溜息をついた。
「はいはい、君はいつも恋人ですって顔だけはしてるよね」
「顔だけって・・・だから、マスターにとって俺ってどういう人に見えてるわけ?」
「鬼畜」
一言、でもきっぱりと言い切りながらマスターはつり銭を俺に差し出した。
まぁ、それについては否定はしないけど。
釣りを受け取った俺はマスターにバイバイ、と手を振りながらバーを出て行った。

駅へと向かう道の途中、最近名前が売れてきたアイドルの看板を見つけた。
何の気なしに足を止めて見上げてみる。
整った顔立ちはどこか樹に似ているが、アイツのあのギラギラした目つきはまったくない。
そりゃそうだ。
アイドルだってのに妙に悪意を撒き散らしてたらそりゃ職業成り立たないだろ。
誰にでも好かれるように笑顔を作ってファンを騙す。
考えてみたらえげつない商売だ。
とはいっても、俺だって似たような人種だけどな。
笑顔で人を騙すとか。
まぁそのほうが人生楽に生きれるからな。
適当に笑って適当に世間話して適当に飯食って適当にセックスして適当に疲れて眠る。
繰り返しの日常がイヤだって言う連中もいるが、俺はそういうのは感じない。
同じことしていればいいなんて、楽な日常。

「・・・・・・ッ、・・・・・・・・・、・・・・・」
ふいにビルとビルの隙間から漏れ聞こえてきた声に俺は自然と視線を向けた。
まぁ、この場所でこの時間でこの声で。
だいたい何してるかなんて察しはつくけど。
なかなか愉しそうな場面だったら俺も参加してしまおうなんて軽く思ったりもして。
名前も知らない二度と会わないヤツなら無理矢理突っ込んで泣かれても後腐れないだろ。
本当に泣かせてやりたい人間は他にいるけどな。
俺のアイドルばりの愛想笑いを憎憎しげに睨んでくる、アイツ。
アイツを一番、汚してやりたい。

・・・俺はビルの隙間の細い路地に向かって歩き出した。
その先には駐車場がある。


さて、どんな男たちが戯れているんだろうな?
俺の好みだと張りきれるんだが。
まぁ、好みじゃなくても妥協してやるよ。
どうせ虐めたいのは一人だけ。



一人だけだからな。





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