<神様なんて大嫌い>

STAGA 5 用意周到な僕


携帯を震えさせたメールの着信に、俺は素早く反応した。
今日まさか事務所にコイツがいるなんて思っていなかったから、今夜の約束を取り付けてしまっていた
セフレへの謝りのメールを先ほど送信したからだ。
まぁ最初から身体を手に入れようとは思っていないから、今夜は空いてるっちゃ空いてるんだが。
何時までコイツと一緒にいるか読めないから連絡を入れておいたんだ。
初めての獲物はよく狙ってから襲わないと、確実に喉笛を噛み砕くことが出来るとは限らないからな。
まずは下見。
それからデータ収集。
そいつが一番喜ぶやり方で、可愛がって大切にして陥れてやる。
なんて愉しいゲームなんだろうな?
樹は俺がメールを返信している間、暇そうに頬杖をついてぼーっとフロアを見つめていた。
今何を考えている?
ご飯の変わりに俺がセックスをねだるとでも思っていたのか?
残念だけど他の奴らと同じ行動をしていちゃお前を苦しめることなんて出来ないだろう?
なんせ俺は、お前のことが大嫌いなんだから。
「・・・・っと、悪いな。ちょっと知り合いが今夜のことで・・・ね」
そういうと樹はあからさまに嫌そうな表情を浮かべてきた。
自分と一緒にいるのに他のヤツとそういう会話でもしてるのか、って顔だ。
プライドが刺激されたらきっとコイツは俺のことが気になり始める。
それが最初の堕落の合図。
「・・・フゥン?まぁ、エッチしないなら俺の用はもう終わったしな」
そう言うと樹は脱色した髪を指で梳いてから探るような視線で俺を見てきた。
俺との距離を測るような、踏み込みの合図を待っているような。
そんな視線だ。
「なんだよ、樹のために断ったんだから、もう少し一緒にいてくれてもいいだろ?」
さぁ、俺の見せ場はここからだ。
笑顔を浮かべたまま仰ぐように下から顔を覗き込んでやる。
そして低い甘い声でそっと。
「・・・俺はまだ、口説き足りない」
さぁ、落ちておいで、キティ。
お前みたいなヤツは一度痛い目見ておいたほうがいいんだ。
俺はあやかみたいなタイプが好みだけど、一度や二度くらいならお前を抱いてやるからさ。
縋ってみせろよ、その端整な顔で。
「・・・・・・目ェ、瞑れよ」
俺は嬉しそうに目を細めてゆっくりと瞼を閉じた。
OKの合図は口付けでいい。
キスをしてきたらそのまま腰を抱き寄せてたっぷり甘い会話を繰り返してやろう。
アンタが二度と、自分の足で立てなくなるほど濃厚に。

「・・・・・・・・・・・・」
・・・ってのに、いつまでたっても唇に温もりは降ってこなかった。
さすがにおかしいと思った俺は薄く目を開く。
まさか樹に限って照れているとか、そんなことはないだろうが。
「・・・・・・・おいおい」
薄く開いた視線の先の相手を見て思わず俺は脱力しながら呟いた。
だってさっきまでスツールに腰を下ろしてた樹の姿がなくなってるんだぜ?
しかも俺の目の前のカウンターには、食事代よりやや多い三枚の千円札。

・・・なんだソレ。
アイツが飯代出すなんて計算外だ。
これじゃまったくのイーブン。
俺の手に落とすなんて夢のまた夢だ。



それに。




思わず心の準備しちゃっただろ、クソガキが。





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