Original Boys Love Novel 09

KISS TO KISS
LEVEL 09 恋の残り香







唇にだけ
あなたの記憶が残ってる
柔らかな口付けが
今もここに残ってる

もう一度会いにきてよ
残された温もりが
さめないうちに





和輝は、自分の視覚を疑った。
初めて恋をした相手が、自分の名前を呼びながら足早に駆け寄ってくる。
「あやか!」
そして、我慢しきれずに和輝もあやかに向かって走り出し、力強くその体を抱き締めた。
あやかの髪の先が頬をかすめる。
たったそれだけのことだが、あやかを抱き締めている実感を与えてくれる。
「和輝、ごめん!二度と会わないって言ってたのに・・・」
急いでこの公園に来たのか、あやかの息は荒く弾んでいる。和輝は謝罪の言葉を聞いて、ふと我に返った。
「そうだ。俺、もう会わないって、さよならだって言ったんだっけ・・・」
そう言うと、あやかの顔が泣きそうな表情に変わる。
「・・・さよならの前に、ひとつだけ聞いてくれる?」
本当はさよなら宣言を撤回するためにあやかを探していた和輝だったが、先手を打たれて思わずうなづいてしまう。
するとあやかは大きく息を吸い込み、和輝の瞳をまっすぐに捉えながら口を開いた。
「和輝のことが好きだ」
ストレートに、ありったけの思いを込めて。
「和輝が僕の事を好きになる前から・・・ううん、多分それよりももっと前かから、和輝を愛してた」
「・・・」
和輝は唾を飲み込んだ。予測もしなかった事態に、掌が汗ばんでくる。
「この公園で僕が和輝に別れを告げたのは、君を汚したくなかったから。
幸せになってもらいたかったんだ。好きな人だからこそ。・・・僕はアダルトビデオとかやってて、
何人もの男に抱かれてきた・・・。そんな僕と関って、和輝をだめにしたくなかったんだ」
あやかの瞳にうっすらと涙がにじんでくる。
「僕には人に愛される資格なんかないから、貴子ちゃんの話しによくでてくる人気者の和輝に、
憧れを抱いていたのかもしれない。ちょっとだけの好奇心で君に会ったのも事実だよ。
・・・でも、会ったら余計に惹かれていって、止まらなくなって、いつのまにか夢中になっていた・・・」
「あやか・・・」
腕の中で、あやかの身体が震えている。
「本当は、和輝が渋谷まで僕を探しに来てくれた時、すごく嬉しかったんだ。でも、素直になれなくて・・・。
貴子ちゃんから聞いたよ。あのトワレ、貴子ちゃんの家でついたものだったんだね。ひどいこと言ってごめん」
「お、俺こそ!」
「いいんだよ。僕には罵られるだけの理由があるからね。・・・和輝、好きだよ」
見詰めあう瞳が、瞬きもせずお互いを映しだす。
「それだけ言いたかったんだ。・・・聞いてくれて、ありがとう」
そして、和輝の腕から体を離すと、あやかは背を向けた。
「・・・あやか!」
和輝が叫ぶ。
「絶対後悔させないから・・・。あやかのこれから、全部俺にくれないか?」
背を向けたままのあやかの体を、今度は包み込むように優しく抱き締める。
「・・・なに・・・言って・・・」
奮えた声が答える。
「過去にどれくらいの男と寝たかなんて関係ないよ。あやかが汚れているというのなら、一緒に堕落してもいい。
・・・今まで、普通の人生を歩く事に必死だったけど、どんなに望んでいた平凡な人生でも、
あやかのいない世界なんか、いらない・・・」
和輝の指があやかの顔を上に上げ、口付けた。
「心臓の音、聞こえる?こんなにどきどきしてるのは、あやかとキスしたからだよ。
・・・あやかが好きなんだ。会わないなんて言ったこと、すごく後悔してる。だからもう二度と離さない。
離したくない。今まで自分がこんなに独占欲が強いとは思ってなかった。
・・・あやかは、俺の知らない俺をひきだしてくれたんだ」
抱き締めた腕をゆるめて、あやかの体を自分に向けさせると、今度は髪に口付ける。
「俺は不器用だから思いをぶつけることしか出来ないけど、
俺のこれからを全部あげるから、あやかのこれからも俺にくれよ!」
「・・・和輝っ」
あやかが和輝に抱き付いた。
「和輝・・・和輝・・・」
そして、うわごとのように名前を呼びながら、何度もキスをする。
「ごめん、君を傷つける結果になるかもしれない・・・。だけど!だけど僕は・・・」
もう一度、深い口付けをかわす。
「君のすべてが、欲しかったんだ・・・」
「・・・やるよ。今から俺は、あやかのものだ」
微笑んだ和輝を見て、あやかはやっと安心したかのように和輝に体を預けた。
「・・・あっ」
ふいに和輝が空を見上げて小さく声をあげた。その様子に、あやかも視線を上に向ける。
「雪だ・・・」
気が付くと、彼らの周りに白い雪が降りてきていた。
「寒いわけだな。もうすぐ春だっていうのに・・・、名残雪っていうのか?こういうのは」
和輝が眉を寄せてつぶやく。すると和輝の胸によりかかっているあやかが、掌を空に差し出した。
「・・・綺麗だね。きっと、神様がお祝いをくれたんだよ。僕と和輝の気持ちが通い合ったお祝いを・・・」
「ロマンチストだな。・・・そこがまたかわいいけど」
和輝の顔がにこにこと嬉しそうに笑う。
年上にかわいいなんて言うと怒られるかもしれないが、心の底からそう思えるのだ。
「冷えてきた。・・・和輝、温めてよ」
そう言うと、あやかは和輝の腕に自分の腕をからませた。
言葉の意図がわからないほど子供ではない和輝は、あやかと共に公園を後にした。


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