Original Boys Love Novel 03
KISS TO KISS
LEVEL 03 好きだとか、嫌いだとか、同性愛だとか。
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どうか星よ流れてください ありったけの願いを込めて祈るから 笑顔も 泣き顔も 怒った顔ですら僕のものになるように 一人占めできるように どうか星よ流れて 僕の願いを叶えておくれ 「はぁ、俺何やってんだろう」 和輝は見慣れた階段を足早に降りながら、ふと我に返った。今まで早退などしたこたがなかったのに。 「気になって、か」 少女小説の主人公さながらの思考回路が、やけに疎ましく思われてくる。 『一目惚れ』 これだけは避けたいと、和輝は思った。アダルトビデオ(しかもホモの)に出演している男に、一目惚れ。 笑い話にしてもオチがない。 和輝は自分が不幸だとも、恵まれていないとも、思ったことがない。 それどころか、それなりの幸せな生活に満足しているくらいである。 だからこそ、道を踏み外すはずがないと、神様も和輝自身も信じて疑わなかった。 「くっそう。違うぞ、違う」 そう、ホモなんかではない。 和輝は空き缶を踏みつけると、空高く蹴り上げた。迷いを打ち切れるように願いを込めて。 「あ、君!」 空き缶が太陽の光を反射させて、和輝の目を細くさせる。しかし声をかけられた方向からして、 自分を呼んだのだろうと判断した和輝は、右手を額に付けて陽光を遮った。 そして、瞬間。 きっとこれから一生忘れないであろう、瞬間。 和輝の視線に飛び込んで来たのは、画像ではないあの人。 「嘘・・・だろっ」 情けない声で、和輝が呟く。しかし、昨日何度も見た顔は確実に自分へ向かって歩いてくる。 そうして、奇麗に整った顔が五十センチ以内に近づいたのは、ほんの数秒後だった。 真近で見てもあらがない白く滑らかな肌。 その肌がひきだたせる、柔らかそうな唇。通った鼻筋に続く、案外気が強そうな眉。 夢のように奇麗な顔だと、和輝はもう一度感じた。 「君、今ひまだよね?」 微笑みながら告げられた言葉に、和輝は思わずうなづいてしまう。そしてもう一つ、 彼の事を知ることが出来たことに心が踊った。 普段の声は少し低めで、耳に馴染むような、透明で伸びやかな声だという事。 「じゃあ、1時間くらいつきあってくれないかな」 自分より背が小さいせいか、微かに上目使いの潤んだ瞳に見詰められて、和輝は妙に納得してしまった。 自分の逢いたかったものは、この瞳なのだと。 「俺で、よければ」 いつもの彼らしくない、謙虚な言葉。そうさせるのは昨日から続いている微熱のせいか。 彼は和輝の腕に自分の腕をからませると、ぐいぐいと彼を誘導していった。 ついた先は、学校から1キロ程歩いたところにある小さな公園。小さいといっても、桜や銀杏がところせましと 続いているため乗り物が少ないだけで、規模自体はそれほど小さくはない。 「トイレに行きたいんだけど、いい?」 出来心とはいえおかずにしてしまった彼の言葉に、和輝が逆らえるはずもなく、訳のわからぬまま彼等は公園の、 いわゆる公衆トイレと呼ばれる建物に入っていった。 彼は何かを確認するかのように周りを見渡すと、誰もいない事に安堵の溜め息をついた。 そして手を三回叩く。 和輝はそんな彼の態度に不信感を抱きながらも、彼が自分を相手にするまで様子を見ていた。 「さて、と」 準備は出来たといわんばかりに彼が和輝の手を取り、個室の中へ無理矢理引きずり込んだ。 「???」 されるがままの和輝に、彼は微笑みを見せる。 「いただきます」 澄んだ声は、確かにそういった。 いただきます。聞きなれた言葉なのに、何故か違和感を覚えるのはこのシュチュエーションのせいだろうか。 和輝は洋式のトイレに腰掛けさせられながら、そんなことを考えていた。 しかし次の瞬間、和輝の思考は止まった。 彼が和輝の下半身に手を置いたのだ。いくらなんでも、この後の行動が読めないほど、和輝は子供ではない。 あわてて彼の手を掴んで自分から引き離した。 すると、今度は和輝の膝の上にのった彼が優しく、ついばむ様に和輝の唇を吸った。甘い目眩が和輝を支配する。 「ちょ、・・・っと」 それでも自制心で彼の胸を押しのけると、噛付くように彼に向かって質問を繰り出した。 「何するんですか!いきなり・・・。こんなところに連れ込んで、からかってるんですか?それとも・・・」 顔を赤くして怒鳴る和輝の口に人差し指をあてると、彼の舌が和輝の首をたどりはじめた。 「黙って」 指と舌、そして濡れた視線が和輝を愛撫する。 もう、何が起こっても驚かないと思っていた和輝だが、再び困惑がじわじわと心を埋めてゆく。 何故俺は、公衆トイレで男にあらぬところを触られているんだろう。だとか。 そもそもこうなったのは俺に隙があったのか。それとももともと彼と縁があったのか。だとか。 今更考えても意味のない事が、心を支配する。 「・・・っつぁ」 それでも抵抗しないのは、やっぱり彼の事が気になるからだろうか。 恥ずかしさから、和輝は彼から視線を外した。そこで、開いたままのドアの先にある鏡に、自分の姿が映っている事に気付く。 さわられて、なでられて、大きくなっている自分の姿が、そこにはあった。 余計に恥ずかしくなって視線を下げると、彼の顔が目の前にせまってきた。 「だめ、感じて」 言われて、胸がつきんとした。 彼は自分がこの行為に対してうしろめたさを感じている事や、 そのせいで完全に感じる事が出来ていないという事に気が付いていたのだ。 彼の指は和輝の迷いとか、不安を取り除くべく、より一層なめやかに和輝を追い詰める。 「あっ」 小さく声が漏れる。それに気を良くしたのか、彼は和輝に口付けをした。 ぴたりとつけられた熱い唇が、徐々に和輝の唇を割り、舌を絡ませてくる。 湿った音が耳をかすめ、首を撫でる手も、自分を高ぶらせる指も、和輝はすべての感覚で感じていた。 和輝の息が荒くなり始めると、彼の口は和輝のモノを含んだ。湿った舌の感触が妙に心地好い。 舌は巧みに先端をつついたり、裏側を舐め上げたりして、彼を翻弄する。そして、白い歯がやんわりと彼を刺激すると、 和輝の脳裏を白い光が横切り、欲望を放出させた。 「はぁ」 大きく息を吐いて、紅潮した頬を壁にこすりつける。しかし、彼は再び和輝をいじり始めた。 その感覚に、ちらり、と視線を向けると、彼の白い肌がすぐ側にあって、心臓がバクバクする。いつの間に脱いだのか、 きめの細かい肌は少し興奮しているようで、いっそう艶やかに見えた。 「まだ、始めたばっかりだよ」 熱のこもった声でそう言われて、和輝がすぐさま反応する。 彼はそれを見逃しておらず、また立ち始めたそれを優しく愛撫した。 「あ、はぁ」 再び体に発生した欲望が、和輝の脳を支配してゆく。 彼は先程出した和輝の液体を和輝の指にからめると、自分の最奥へと導いた。 「あっ・・・」 声はタイルに反射して、恥ずかしいくらい響いた。 自分の手で和輝の指を進入させると、彼は和輝の耳をそっと噛んだ。 「・・・動かして」 耳元で熱い息とともにそう言われ、和輝の理性がぶっちぎれる。 和輝は見よう見まねで指を挿れては抜き、抜いては突いた。すると、彼の腰も自ら快楽を求めて動きだす。 「あ、あぁん」 両腕で頭を彼の胸元まで引き寄せられて、和輝は思わず彼の胸を舐め上げた。 「あ、あ」 ビクンと肢体が跳ね、内壁が指を締め付ける。その様子を見ているだけで、和輝の身体も熱を帯びてゆく。 「も、いれて・・・」 彼は首を振りながら和輝の肉棒を己の中へと誘い、便座に腰掛ける和輝の上へ座った。 そして、さらなる快楽を得ようと腰を上下させる。 その度に伸縮する彼の双璧を両手で持ち上げると、和輝もまた快感を貪り始めた。 「あ、あ、だめ・・・でちゃうっ」 溶けそうなほど、熱い瞬間が二人を襲う。 「はぁ、はぁ」 肩で息をするのもおっくうになるほど、開放的な気分になる。 イッてしまってからなんだが、本当に男とは快楽に弱い生き物だと和輝は思った。 そして、確実に自分がその生き物の仲間である事を確認させられた事に、脱力感を感じる。 そんな和輝を置いて、彼は事を終えるとすばやく後始末をし、服を着始める。 和輝も、いつまでもパンツをずりおろされた格好のままでいるわけにはいかないので、 そそくさとジーパンごとパンツをはきなおした。 「あの・・・」 自分が出したものを水で洗い流す彼に、声をかける。 だって、まだ何も聞いていない。聞きたい事はたくさんあるのに。初恋かもしれないのに。 体が先だなんて酷すぎる。 「名前は・・・」 へらへら。 そんな表現が似合う顔で、和輝は彼に近づいた。 「いやぁ、お疲れさん!」 そこへ、いきなりでかい声でおやじが割って入ってくる。 いや、おやじというのは失礼なぐらい若く、なかなかハンサムな男が、なのだが。 「よかったよ。あやか」 男は彼に向かって、そう告げた。 そして、男の後ろにいる数人の人影に何か指示を出すと、彼に茶封筒を手渡す。 「そこの子の分も入れといた。いつもより多めだよ」 その後、男は和輝を振り返ると意地の悪い微笑みをした。 「もったいないね。スカウトしたいくらいだよ」 和輝の額に血管が浮く。 忘れていた。彼は、AV男優なのだ。 男の一言が和輝に全てを悟らせた。してやられたとでも言えばいいのだろうか。 彼は和輝をターゲットにしてAVを撮ったのだ。 「じゃあ、次の撮影があるから」 男が鼻歌混じりにトイレを出ると、和輝は彼のえりを掴んだ。そして、えらく物騒な表情で彼を睨んだ。 「説明してもらいたいんですけど、あなたに」 言葉遣いが荒くないかわりに、ドスの聞いた声があたりに反響した。 彼は眉根を寄せて和輝の手を払いのけると、少し咳き込んだ。和輝の手が彼の喉元を軽く絞めていたらしい。 「あやかだよ」 「は?」 答えでない答えに、和輝は気の抜けた声を出してしまう。 「あやか。それが僕の名前」 あやかと自己紹介する彼は、流しの上に両手を置き、体重をかけた。 それだけの動作が妙に色っぽく見えるのは、和輝の錯覚だろうか。 「それで、和輝君は何を説明してもらいたいのさ」 不機嫌そうに自分の名を呼ばれて、和輝は目を丸くした。 「え・・・、何で、俺の名前を?」 すると、今度はあやかが目を丸くする。 「あれ?・・・何、聞いてないの?」 その問いに、和輝は大きく頭を縦に振った。 この件に関しては何も知らないし、何も聞かされてない。 「うっわ。・・・どうしよう」 あからさまに、あやかの顔が動揺する。その様子に、あやかに責任があるのではないということを察知すると、 和輝の頭に一人の小悪魔の顔が浮かんだ。 「もしかして、貴子ですか?」 和輝が口にした名前に、あやかが反応する。 「そう、貴子ちゃんの紹介でしょう?」 読めた。 貴子はよりにもよって、和輝を売ろうとしたのだ。しかもアダルトビデオ屋に。 だから、あやかは和輝がすべてを承知して、行為におよんだと思い込んだのだ。 そしてやっと、和輝は現状を理解し始めた。すべては、貴子の企みが始まりだったのだ。 「貴子ちゃんが和輝君に話をつけといてくれるってことで、僕があの場所で待っていたんだ。 素人がいいって言われてたから何も言わずに始めちゃったんだけど、和輝君も僕についてきてくれたから、 わかってるんだと思って・・・ごめん。そう簡単にホモビデオになんか、でないよね」 大方、貴子は放課後会いに来て、和輝をだますつもりでいたのだろう。もとから話しをつける気など、彼女にあるはずがない。 けれども和輝が早退した事によって、一見その野望は打ち砕かれたかのように思われた。 が、しかし。運命のいたずらか、和輝は指定されていた場所を歩いてしまったのだ。・・・というか、帰り道なのだが。 「ごめん」 考え込んでいた和輝に、あやかはもう一度謝罪した。 「もういいですよ。全部貴子のせいですから」 「でも、ホモなんていやだろう?」 聞かれて、和輝の動きが止まる。 確かに、数日前までは同性愛者なんて考えるだけでも恐ろしかった。なにせ国によっては法律で禁止されている事だ。 最近になって理解がでてきたとはいっても、ホモだと知れて良い事があったなんて話は聞いたことがない。 そう、ホモなんて、人並みから外れる事を嫌う和輝にとってはまさに天敵だった。 なのに彼に犯られた時、不快な思いなど一片たりとも感じてはいなかった。それどころか、和輝は感じていたのだ。 「えっと・・・」 先程まで行われていた情事を思い出し、和輝は照れたように視線を泳がせた。 「そうだよね」 あやかは、和輝が自分を嫌がっていると思い、うなだれてしまう。 「世間に顔向けできないようなこと、させちゃったね」 すこし青みがかった瞳に影が落ちる。 和輝はやばいと思い、彼の肩を掴もうとする。しかし、あやかが顔を上げたので手を引っ込めた。 「でも、僕は後悔していないよ」 先ほどとはうってかわって、強気な瞳が和輝を見た。 「ホモでも、何でも、自分の好きな事をしたいからね」 微笑んだ顔がやけにまぶしい。 「ただ、ノンケの男の子に手を出すのはナンセンスだと思うから、やっぱりあやまるよ」 そう言って頭を下げられ、和輝が慌てる。 「や、止めて下さい!今回のことは事故みたいなもんだし、俺、してもらうばかりで、その、感じてたし・・・」 和輝の顔は真っ赤だった。 「・・・っぷ」 その様子に、あやかが思わず吹き出した。 「あははは。いいね、和輝君、いいよ」 お腹を抱えて笑うあやかに、和輝がむっとして抗議する。 「わ、笑わないで下さい!俺、真剣なのに!」 「ご、ごめん」 詰め寄られて、あやかはお手上げのポーズをした。そして和輝の頬にキスをする。 「ありがとう。気を遣わせちゃったね。・・・それにしても貴子ちゃんからいろいろ聞いていたけど、 こんなにいい子だとは思っていなかった。・・・誉め言葉だよ。本当に。僕の好みだ」 和輝はますます赤くなった。 「あのまま最後までやっちゃえばよかったかな?」 冗談にしては刺激的な一言だった。 「あやかさんこそ、思っていたよりぜんぜん奇麗で、びっくりしました」 綺麗なんて言葉は聞きなれているのか、あやかは軽く礼を言うと、煙草を取り出した。 「さん付けで呼ばなくてもいいよ。僕、人からさん付けで呼ばれるのとか、敬語使われるの嫌いなんだ」 白い指が煙草に火を付けると、赤い唇が煙を吸った。 何だか都合のよい夢を見ているようで、和輝の頭の芯はぼうっとしてくる。 「じゃあ、あやか・・・」 呼んだ和輝が照れてしまう。 「うん?」 答えて、あやかが和輝に顔を近づかせる。整った顔を真近に見て、和輝が息を呑んだ。 鼓動はとうに脈速の限界を越えている。 それに気付いたのか、あやかがそっと目を閉じて口付てきた。煙草の煙が口に広がり、甘いしびれを感じる。 「よけなくていいの?」 ほんの数センチ先で、あやかの柔らかい唇が聞く。 「男同志だよ?」 そんな言葉に、和輝は無表情のままあやかを抱き締めた。 唇には、まだ互いの温もりが残っている。 「だって、どきどきするから」 そう、止まらない。 「もしかして、俺あやかのこと・・・」 好きかもしれない。 はじめて、あなたを、見たときから。 「だめだよ」 あやかがもう一度和輝に口付けする。 和輝の言葉を、そのまま喉の奥に飲み込んで。 「それ以上言ったら、君は戻れなくなってしまう。思春期にありがちな、快楽を恋だと勘違いしたまま・・・」 喋る度に軽く唇が触れる。 和輝が、他人をこれほど近い距離に置いたのは、初めてだった。体だけでなく、心さえも至近距離で接している。 「初めて会ったのに、関係を持ってしまったからって・・・」 そして、言葉を続けようとしたあやかの口を、今度は和輝が塞いだ。 「違う、そんなんじゃない!」 気付いてしまった。 「ずっと気になってた。貴子に無理矢理見せられたビデオの中で、あなたを、あやかを見つけてから、ずっと熱にうなされてた。 なんでだろうって、なんでこんなにも胸が苦しいんだろうって。悩んで、それで、考えたら解った」 あやかの体を自分の腕にうずめたまま、和輝は真っ赤になって叫んだ。 「俺は、あやかに一目惚れしていたんだ!」 生まれて初めて、自分から告白した。 好き。 息が止まるくらい。 心臓が痛くて、血を流しそうなくらい。 アナタガ、スキ。 アナタデナクチャ、モウ、カンジラレナイ。 「始めから、俺はあやかに惹かれていたんだ。会って、ますますそう感じた」 和輝の真剣な瞳に、あやかも真剣な声で返す。 「だったら、抱けるわけ?ノーマルな男の一線を、越えられるわけ?」 ノーマルな男の一線。それは、和輝が一番越えられないものだ。 和輝の顔が一瞬ひるんだ。 「できないだろう?君が、率先して男とセックスなんか出来るようには到底見えないしね! ・・・だったら、中途半端に告白なんかして、僕をその気にさせるな!」 あやかは必死で和輝の腕を振り払うと、公衆トイレを飛び出した。 |
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